競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

巨人軍山口投手の処分と優越的地位の濫用

巨人軍の山口投手に対する処分について、(1)日本プロ野球選手会の主張と(2)それに対する巨人側の反論が報道されていました。 まずは引用いたします。 (1)日本プロ野球選手会の主張 また労働契約でない特殊な契約と考えたとしても、このような不当な…

酒類の廉売に関する公正取引の基準の公表(国税庁)

過去の記事では、パブリックコメント前に審議会に提出されたものでしたが、「酒類の廉売に関する公正取引の基準」が平成29年3月31日に公表されました。 酒類の公正な取引に関する基準を定める件|国税庁告示|国税庁 (参考) 酒類の公正な取引に関する基準…

長崎県での債権譲渡に対する報道

「株式会社ふくおかフィナンシャルグループと株式会社十八銀行の経営統合」は昨年7月から公取委の二次審査となっています。 http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/index.files/160708.pdf この企業結合については、問題解消措置として債権譲渡が検討されている…

アマゾンのMFN条項に関する処理

アマゾンジャパン合同会社に対する独占禁止法違反被疑事件に対する公取委の処理として、自発的な措置を前提とした審査の終了が公表されました。 (平成29年6月1日)アマゾンジャパン合同会社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について:公正取引委員会 本…

今後のブログの予定(不定期更新となります。)

これまで、一年間、毎週一回の更新を基本としてブログを継続してきました。この一年間で一段落とし、今後は不定期更新としたいと考えております。 ご覧いただきありがとうございました。 事実誤認や論理の誤り、ご質問、ご要望等がありましたら、japan.compe…

(論文紹介)プラットフォーム産業における市場画定

RIETI にて川濵 昇教授、武田 邦宣教授の論文が公表されていました。 www.rieti.go.jp プラットフォームの市場画定に関連して、無料市場、データ市場、イノベーション市場を含めて、現状の議論が紹介されています。 内容は消化しきれていませんが、簡潔に整…

ガソリン適正取引慣行ガイドライン(経済産業省)

2017年3月下旬、経済産業省が下記を公表しました。 「ガソリン適正取引慣行ガイドライン」を策定しました(METI/経済産業省) 次の記載はあるものの、「ガイドライン」でありながら、経済産業省の所管法令に関する判断基準を示しているものではなく、具体的…

長崎県での金融庁説明会

実施から1ヶ月以上経過してしまいましたが、金融庁が2017年3月8日に長崎県での説明会を開催したとされています。公式の記録は確認できていませんが、一定の記事が存在します。 www.kinzai.jp www.nikkei.com (1)開催目的 説明会の開催目的は、 「…

「デジタルカルテル」の定義など(2017.4.2日経記事より)

日経新聞に「デジタルカルテル」についての記事が取り上げられました。 ニュースが少ない日曜日とはいえ、一定の紙面をさいて、また電子版ではインタビューも掲載されていました。 AIが価格調整 デジタルカルテル、法的責任だれに :日本経済新聞 (記事1…

日経経済教室:新時代の競争政策(上)大橋弘東大教授

2017年3月22日と23日に連続して、日本経済新聞の経済教室欄に「新時代の競争政策」と題して、大橋教授と杉本公取委委員長の主張が掲載されていました。 新時代の競争政策(上)IT世界の寡占化 課題に データ囲い込み 対応急務 大橋弘・東京大学教授 :日本経…

新潟県の地銀が経営統合との報道

3週間連続で銀行関連の記事となってしまいました。 新潟県で最大手の第四銀行と二番手の北越銀行が経営統合するとの報道がありました。 地銀再編、次は新潟で第四・北越が経営統合へ | 週刊ダイヤモンドSCOOP | ダイヤモンド・オンライン 両行とも、経営統…

長崎県の銀行の企業結合:金融庁の説明会と官房長官コメント

前回の記事と関連する内容です。 長崎県の銀行の企業結合についての記事と論文 - 競争政策研究所 公取委で二次審査中の「株式会社ふくおかフィナンシャルグループと株式会社十八銀行の経営統合」*1に関連して、十八銀行の基盤である長崎県で、金融庁が企業向…

長崎県の銀行の企業結合についての記事と論文

2017年2月20日に、長崎県の銀行の企業結合の記事が日経新聞に掲載されていました。 (エコノフォーカス)寡占巡り論争 ふくおかFGと十八銀統合計画 :日本経済新聞 公取委ら当事者の考え方を理論的裏付けを交えながら解説する記事であり、意欲的な取組みと…

公取委の庁舎移転

公正取引委員会の庁舎が、中央合同庁舎6号館から5号館に移転するとの報道がありました。 庁舎の賃料、16億円削減 環境省・公取委など移転・集約で :日本経済新聞 移転先である環境省の移転が2020年度以降と報道されていますが、公取委の移転時期は報道さ…

データと競争政策:デジタルカルテル

今回の記事は非常に短いです。 経済産業省の「第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会」(第1回)の資料 第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会(第1回)‐配布資料(METI/経済産業省) では、下記のとおり、「デジタルカルテ…

全米商工会議所での安倍首相発言

安倍首相の米国訪問の一環で、2017年2月10日に全米商工会議所・米日経済協議会共催朝食会に出席したようです。 安倍総理の全米商工会議所・米日経済協議会共催朝食会への出席 | 外務省 その際の発言要旨が記事になっていました。 www.nikkei.com 記事による…

欧州委がデジタル分野の3事件の審査を開始

2017年2月2日、欧州委員会が電子商取引(Eコマース)関連の3事件の調査を開始したと公表しました。 European Commission - PRESS RELEASES - Press release - Antitrust: Commission opens three investigations into suspected anticompetitive practices …

データと競争政策:ネットワーク効果

2017年1月29日時点で、経済産業省の「第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会」(第1回)の資料と議事要旨 第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会(第1回)‐配布資料(METI/経済産業省) 第四次産業革命に向けた競争政策の在…

データと競争政策:経産省研究会(1)趣旨と経緯

前回の記事 データと競争政策:経産省と公取の検討会(1)比較 - 競争政策研究所 に引き続き、 「第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会」(以下「経産データ研究会」)について、考察したいと思います。 現時点において、経産データ研究会の…

データと競争政策:経産省と公取の検討会(1)比較

経産省と公取委が、各々で「データ」と競争政策に関連して検討の場を設けると、同日(2017年1月12日)に公表しました。 経済産業省 「第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会」を開催します(METI/経済産業省) 公正取引委員会 (平成29年1月1…

酒類の廉売に関する公正取引の基準案(国税庁)

以前紹介したとおり、酒類の廉売を規制する観点から酒税法等の改正がなされ、 酒の廉売規制 - 競争政策研究所 規制の具体的な基準の案(酒類の公正な取引の基準(案)。以下「基準案」)が、平成28年12月21日の国税審議会酒類分科会に示されました。 第17回 …

ガソリン卸売価格の「価格操作」

毎日新聞がガソリンの卸売価格に関する報道を行いました。 記事(1) ガソリン卸価格、給油所の半数高値 大手5社が繰り返す(2016/12/17) http://mainichi.jp/articles/20161217/dde/001/020/046000c 記事(2) ガソリン卸、監視強化へ 経産省、消費者に影響懸…

(EU)MicrosoftによるLinkedIn買収の条件付き承認

欧州委がMicrosoftによるLinkedIn買収を条件付きで承認したようです。 European Commission - PRESS RELEASES - Press release - Mergers: Commission approves acquisition of LinkedIn by Microsoft, subject to conditions 条件(コミットメント)は後述…

介護に関する公取委報告書について(2)国会でのやり取り

混合介護について、国会でも取り上げられたようです。 保険制度の崩壊招く/倉林議員 「混合介護」撤回を/参院厚労委 公開された議事録が興味深いものであったので、紹介したいと思います。 参議院会議録情報 第192回国会 厚生労働委員会 第6号 平成二十…

介護に関する公取委報告書について(1)

9月、公取委は介護に関する報告書を公表しました。 (平成28年9月5日)介護分野に関する調査報告書について:公正取引委員会 具体的には以下の点について検討がなされています。 [1]多様な事業者の新規参入が可能となる環境 [2]事業者が公平な条件の下で競争で…

トランプ大統領と反トラスト法(2)

前回の記事 トランプ大統領と反トラスト法 - 競争政策研究所 の補足的な記事です。 トランプ大統領の下での反トラスト法執行体制について、新たな報道がありました。 US: Former FTC Commissioner to lead Trump transition on antitrust | Competition Poli…

トランプ大統領と反トラスト法

トランプ大統領の就任により、米国反トラスト法の執行については、どのような影響が推測されるのでしょうか。なお、法執行そのものは、当局の判断であり、大統領が「直接の」影響を持つものではないと考えられます。 まず、日本語にも翻訳されているとおり、…

JAおおいたに対する立入検査 など

JAおおいたに対する立入検査 大分県農業協同組合(JAおおいた)に対して、公正取引委員会が立入検査を実施したとの報道がなされました。概要については、次のようなものとされています。 JAおおいたは2008年、大分県北部の3市で生産される小ネギの銘柄…

雇用契約と競争法(2)公取委の見解

前回 雇用契約と競争法(1)米国ガイダンス - 競争政策研究所 の続きです。 今回は、日本における雇用契約と競争法の関係について、公取委の見解を中心に検討したいと思います。 結論を先取りすると、公取委の見解には批判があり、私も疑問が多いと考えます。 …

雇用契約と競争法(1)米国ガイダンス

米国DOJとFTCが人事担当者向けの反トラスト法ガイダンスを公表しました。 Justice Department and Federal Trade Commission Release Guidance for Human Resource Professionals on How Antitrust Law Applies to Employee Hiring and Compensation | OPA |…