競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

酒の廉売規制

酒の廉売を規制する酒税法の改正がなされたました。これは議員立法によります。

概要や法律条文は下記にあります。

酒税法等の改正のあらまし(平成28年6月)|酒税関係法令等の改正|国税庁

 

報道では、酒の安売りを過度に規制し消費者の利益を損なうものであるとか規制や集票目当てであるといった批判的な言及が散見されます。*1

 

具体的な改正後の条文は次のとおりです。長いです。太字は引用者によるものです。

酒税法

酒類製造免許の取消し)

第十二条  酒類製造者が次の各号のいずれかに該当する場合には、税務署長は、酒類の製造免許を取り消すことができる。

六 酒類業組合法第八十四条第二項(酒税保全のための勧告又は命令)又は第八十六条の四(公正な取引の基準に関する命令)の規定による命令に違反した場合

酒類販売業免許の取消し)
第十四条  酒類販売業者が次の各号のいずれかに該当する場合には、税務署長は、酒類の販売業免許を取り消すことができる。

四 酒類業組合法第八十四条第三項(酒税保全のための勧告又は命令)又は第八十六条の四(公正な取引の基準に関する命令)の規定による命令に違反した場合

 

 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律

(公正な取引の基準)

 第八十六条の三 財務大臣は、酒税の保全及び酒類の取引の円滑な運行を図るため、酒類に関する公正な取引につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準(以下「公正な取引の基準」という。)を定めるものとする。

 2 財務大臣は、公正な取引の基準を定めるに当たつては、酒類製造業者又は酒類販売業者の適切な経営努力による事業活動を阻害して消費者の利益を損なうことのないように留意しなければならない。

 3 財務大臣は、第一項の規定により公正な取引の基準を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

 4 財務大臣は、公正な取引の基準を遵守しない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その者に対し、当該公正な取引の基準を遵守すべき旨の指示をすることができる。

 5 財務大臣は、前項の指示に従わない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その旨を公表することができる。

 6 財務大臣は、おおむね五年ごとに公正な取引の基準に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを改正するものとする。この場合においては、第二項及び第三項の規定を準用する。

(公正な取引の基準に関する命令)

第八十六条の四 財務大臣は、前条第四項の指示を受けた者がその指示に従わなかつた場合において、酒税の円滑かつ適正な転嫁が阻害され、又は阻害されるおそれがあると認めるときは、その者に対し、当該指示に係る公正な取引の基準を遵守すべきことを命令することができる。

 

公正取引委員会との関係)

第九十四条 財務大臣は、第四十三条第一項(第八十三条において準用する場合を含む。)の認可、第八十四条第一項から第三項までの規定による勧告若しくは命令又は第八十六条の三第一項の規定による公正な取引の基準の制定(同条第六項の規定による公正な取引の基準の改正を含む。)をしようとするときは、あらかじめ、公正取引委員会に協議しなければならない。 

 条文を見ますと、いくつかのことに気づきます。

(1)販売業者(小売店)のみならず、製造業者の免許取消しも含まれていること

(2)具体的な公正な取引の基準は今後財務大臣が定めること。

(3)基準の策定にあたっては、「適切な経営努力による事業活動を阻害して消費者の利益を損なうことのないように留意しなければならない」ことや公正取引委員会に協議が必要であるといった留保があること。

(4)免許取消しのトリガーとなる「命令」はその前提となる「指示」に従わない場合のみに発せられるという二段階の方式であること。

 

ところで、法改正成立(参議院通過)の写真を見ると、全会一致ではなく、一人だけ法改正に反対している議員がいます。

ニュースでもその画像が表示されていました。

www.sankei.com

 

それを誰かと調べると

山本太郎議員(生活の党と山本太郎となかまたち

です*2

なお、当ブログは各党や各議員の支持・不支持などを主張するものではありません。事実関係として述べているのみです。

既にこの事実に言及する情報もあります。

thepage.jp

 

ちなみに、参議院は各議員の投票結果がインターネット上で明示されるようですが、衆議院においては同様ではありませんでした。