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競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

長崎県の銀行の企業結合についての記事と論文

公正取引委員会 企業結合 日本経済新聞 長崎 金融庁 銀行

2017年2月20日に、長崎県の銀行の企業結合の記事が日経新聞に掲載されていました。

(エコノフォーカス)寡占巡り論争 ふくおかFGと十八銀統合計画 :日本経済新聞

 

公取委ら当事者の考え方を理論的裏付けを交えながら解説する記事であり、意欲的な取組みと感じました。記事で紹介されていたレポートを読み解こうとしましたが、難解であり、納得のいくブログ記事を書けるには至っていませんが、中間的にまとめてみました。

 

具体的な争点となっている事案は

「株式会社ふくおかフィナンシャルグループと株式会社十八銀行の経営統合」であり、昨年7月から公取委の二次審査となっています。

http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/index.files/160708.pdf

 

本件をめぐっては、経営統合により効率化効果があるとする金融庁側の意見として、金融庁金融研究センターのディスカッションペーパーが取り上げられています。

長崎県における地域銀行の経営統合効果について」 (大庫 直樹、中村 陽二、吉野 直行 2017年1月)

http://www.fsa.go.jp/frtc/seika/discussion/2016/06.pdf

(以下「長崎論文」)

 寡占による競争の後退を懸念する公取委側の根拠の一つとして、「15年に日銀金融機構局がまとめたリポート」が紹介されていましたが、レポートそのものは検索することができませんでした。このため、それぞれのソースに依拠して論じることはできませんでした。

 

(1)記事のグラフ

日経記事での銀行・金融庁側と公取委側の主張が、以下のグラフが端的に表しています。

f:id:japancompetitionpolicy:20170304222232p:plain

 出典:

(エコノフォーカス)寡占巡り論争 ふくおかFGと十八銀統合計画 :日本経済新聞 ただし、赤色の丸は引用者によるもの。

 

銀行・金融庁側は貸出残高が増加するほど、経費削減の傾向があり、「貸出金利」が「低下」するというものです。

公取委は地域内の寡占度合いが高いほど貸出金利が上昇する傾向にあるというものです。

このグラフを見ると、なぜ赤色の丸の「貸出金利低下」となる根拠がわかりませんでした。むしろ、両グラフによれば、経営統合により費用は削減される(上のグラフ)が貸出金利は上昇し(下のグラフ)、統合後の銀行のみが利潤を高めるとの論理となるように思われます。

 

(2)長崎論文での費用と金利の関係

上の疑問を持ちつつ、長崎論文 を見ると、費用の低下と貸出金利の関係は明確に記載がありました。

ただし、貸出金利を低廉に抑えるコスト構造になるだけであり、実際に規模 が拡大すると貸出金利が低下するかどうかは、さらに深い検証が必要になる。 それについて、一定の見解を示しているのが、平賀一希・真鍋雅史・吉野直行 による「地域金融市場では、寡占度が高まると貸出金利は高まるか」である。この論文によると、過去 5 年分の都道府県別の貸出金利水準は、都道府県別の 貸出残高による HHI が高まるとマイナスに転じる統計的な傾向があることが実証されている。

出典:P6

 

指摘の論文は下記と考えられます。

「地域金融市場では、寡占度が高まると貸出金利は上がるのか」 (平賀 一希、真鍋 雅史、吉野 直行 2017年1月)

http://www.fsa.go.jp/frtc/seika/discussion/2016/05.pdf

この論文は、長崎論文と同時期に金融庁金融研究センターのディスカッションペーパーとして公表されています。

この論文は日本の地域ごとの寡占度と貸出金利の関係を検証しています。しかし内容が経済学の専門的な内容であり、現時点では、自分の中で十分に消化できていないため、更に勉強したいと考えています。

 

(3)長崎論文に対する指摘事項

長崎論文には内容面でも疑問があり、それについて更に検証したいと考えています。しかし、表面的な事項だけでも、次のような指摘が可能です。

・「果たして、銀行業では、規模拡大による効率化の余地は、顧客の利益に敵うのか、あるいは供給者の利得を増やすだけなのか、それを検証していくことが、本稿の狙いである。」(P1 下線は引用者による。以下同じ。)は、「利益に適う」の誤字ではないか。

・「また、銀行業がネットワーク産業である。それは、不特定の個人や法人から予期を集め、不特定の企業や個人に貸し付けていくこと自体、結びつける行為であり、ネットワーキングと呼ぶことができることからも、然りである。」は、「預金を集め」の誤字ではないか。

・「また、市場金利も長期にわたって継続的に低下していたが、日銀による今年 1 月のマイナス金利導入以降は、市場運用による収益確保が一層困難な局面を迎えている。」(P3)について、マイナス金利の導入は2016年である(2016年内に作成したドラフトを、2017年1月に公表したため、齟齬が生じたと考えられる。)。

・「それについて、一定の見解を示しているのが、平賀一希・真鍋雅史・吉野直行による「地域金融市場では、寡占度が高まると貸出金利高まるか」である。」(P6)は、論文の正式な題名は「地域金融市場では、寡占度が高まると貸出金利上がるのか」である。

・次のグラフ(P7)に、「プロットエリア」との不必要な表記がある。

f:id:japancompetitionpolicy:20170304230058p:plain

 

 

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