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競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

長崎県の銀行の企業結合:金融庁の説明会と官房長官コメント

前回の記事と関連する内容です。

長崎県の銀行の企業結合についての記事と論文 - 競争政策研究所

 

公取委で二次審査中の「株式会社ふくおかフィナンシャルグループと株式会社十八銀行の経営統合」*1に関連して、十八銀行の基盤である長崎県で、金融庁が企業向けの説明会を開催したとされています。また、報道では、金融庁が「指針」を示すとされています。

 

地銀再編で異例の指針 金融庁「顧客の視点重視を」 統合効果、地域に還元 :日本経済新聞

しかし、この「指針」がいわゆる「ガイドライン」として、法令解釈に関連して文書で金融庁の考え方を示すものであるのか、説明会で口頭で示された内容を指すのかは分かりません。なお、現時点で、説明会や「指針」の内容について具体的には確認できていません。

 

この説明会に関連して、3月8日午後の菅義偉官房長官記者会見で、発言があったようです

官房長官、地銀統合「地域の活性化につながることを期待」 :日本経済新聞

 

前置きが長くなりましたが、今回はこの官房長官記者会見について、考察したいと思います。

平成29年3月8日(水)午後 | 平成29年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

(該当部分の質疑は11:20ころから)

 

まず、内容全体を文字に起こししました。

(記者)共同通信のAです。話題変わりまして地方銀行の関係でお尋ねします。金融庁は、本日、ふくおかフィナンシャルグループと経営統合で合意している十八銀行の地元長崎で、企業向けに異例の説明会を開きましたが狙いをお願いします。


官房長官)まずですね、ふくおかフィナンシャルグループ十八銀行が経営統合を公表していますが、現在公取で審査が行われている途中だそうでありますのでコメントを控えたいと思います。
 いま指摘されました説明会ですけれども、地元企業の方から色々な不安が出てくるとか色々な問題がありましたので、金融庁の地域金融に対する考え方など、そうしたことを長崎県の皆様に対して説明をしたということであります。

(記者 上記と同一かどうかは不明)いま長官がおっしゃりましたように、(経営統合は)公取委で審査が行われているわけですが、二社の統合が実現すれば、県内の貸出金シェアの二社の(統合後の銀行の)割合が高くなって金利が高止まりしてしまうのではないかと懸念があるのですけど、こうした懸念自体、長官はどうお考えでしょうか

官房長官)説明会ではそうした地元の不安があったので、まだ審査中でありますけれども、地域金融に対しての金融庁としての考え方を示して安心をしていただいたということではなかったでしょうか。私(の個人的見解)ということではありますけれども、政府として、やはり地域の金融機関がですね、経営統合あるいは再編するということはですね、まず自主的な判断ではありますけれども、一般論で申し上げれば、地域の金融機能が更に円滑に発揮されて地域の活性化につながることをこれは期待したいと思います。

 

 

 映像では、官房長官は一定の頻度で手元に視線を落としており、回答のスクリプトがあることがうかがわれます。回答の内容も、経営統合自体の見解を問われていないにもかかわらず、公取委にて審査中であり、個別の事案にはコメントしない旨をまず述べています。この構造は、麻生金融担当大臣の過去の会見とも類似しています。*2

この部分は、公取委の個別の事案審査について、意見を述べるものではないことを強調する趣旨と考えられます。「公正取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」(独占禁止法第二十八条)ことになっているからです。

 

 

記者の2回目の問に対して、敢えて「地域の金融機能が更に円滑に発揮されて地域の活性化につながる」との一般的見解を答えています。貸出金利の高止まりへの懸念についての質質問への回答として、この部分は必要不可欠ではなく、敢えて一歩踏み込んだ発言をした、あるいはスクリプトに踏み込んだ発言が記載されていたのではないかと推測します。

 

この点について、政府として推進する「地方創生」のために、地銀再編による金融仲介機能の改善が必要となると指摘する記事もありました。

金融庁が説明会、健全な地銀再編後押し(1/2ページ) - 産経ニュース

官房長官の発言は、政府として地銀の経営統合全体を後押しする方針を示唆している可能性もあります。

 

 (2017年4月9日 誤ったアイキャッチ画像を削除)

*1:

http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/index.files/160708.pdf

*2:

麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要:金融庁

 

問)

福岡フィナンシャルグループと十八銀行の経営統合が公取の審査が長引いている関係で段取りがそれぞれ半年延期になった、これが1月にアナウンスされたことは御承知のとおりです。今の現状について、金融担当大臣としてどのように御認識されているかというのが1点と、金融庁が3月8日に地元長崎で地域金融に関する説明会の開催を予定しております。統合に関する地元理解が深まる可能性があるというふうにも考えますけれども、この開催の意義、狙いについて御見解をお聞かせください。

答)

最初の方の話は個別案件に関わる話ですから、これにコメントすることは差し控えたいと思いますが、一般論で言えば、経営の統合とか再編は、金融機関が自主的な経営判断をされるのが当たり前なのだと思います。しかし各地では、人口減少は結構進んでいますから増えるところと減るところと人口の差がついてきます。九州の中を見ても人口の差がついてきますので、うまく金融機関の健全性が維持されるようにしておかないといけないところだとは思ってはいます。説明会は、その地域の金融行政について、各地でいろいろやりますが、金融庁の取組み等について長崎県の皆様に対していろいろ説明をするというものです。