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競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

ガソリン適正取引慣行ガイドライン(経済産業省)

2017年3月下旬、経済産業省が下記を公表しました。

「ガソリン適正取引慣行ガイドライン」を策定しました(METI/経済産業省)

 

次の記載はあるものの、「ガイドライン」でありながら、経済産業省の所管法令に関する判断基準を示しているものではなく、具体的な法令上の処分等との関連があって作成したものでは無いと考えられます。

経済産業省は、石油製品の需要減少、元売の経営統合等環境変化にかかわらず取引の安定を確保していくため、一層適正な取引慣行を実現することが重要であることから、今般、「ガソリン適正取引慣行ガイドライン」を策定しました。

(発表文より)

 

ガソリン適正取引慣行ガイドライン(以下「経産省GL」)では、なぜか独占禁止法に関する記載が見られます。今回の記事で、それぞれの根拠について検証したいと思います。

 

(1)優越的地位

このような元売と系列SSの間の取引関係については、系列SSは、系列取引関係にある元売に関連する投資を既に行っており、他の元売への取引先変更は容易でないと認められ、事業経営上大きな支障をもたらすことが多いことから、一般に、元売は系列SSに 対して優越的な地位にあるといえる。

 (経産省GLのP2)

 

公取委関連文書では、次の記載が確認できました。以下公取委の文書は青字とします。

系列特約店は,特定の元売と取引するに際し,その元売に関連する投資を行っているなど,取引先を他の元売等に変更することが事業経営上大きな支障をもたらすことが多い。したがって,一般に,元売は,系列特約店に対して優越的な地位にある。

出典:ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について:公正取引委員会 第3

 

エ 元売と系列特約店との関係
 系列特約店は,特定の元売にガソリンの供給を依存している。元売は,資本金の額が1000億円を超える者を含む大規模な事業者である一方で,系列特約店(特に一般特約店)の多くは運営するSS数が1~3箇所の小規模特約店であるとみられる。

 また,系列特約店が取引先である元売を変更した場合には元売が発行しているクレジットカードの顧客が失われる懸念があること,ブランドを変更すると信用力・集客力が低下する懸念があること,系列特約店は特定の元売と取引するに際し当該元売に関連する投資を行っていること等を考え合わせると,系列特約店にとっては,取引先を他の元売等に変更することが事業経営上大きな支障をもたらすことが多い。したがって,一般的にみると,元売は,系列特約店に対して優越的な地位にあるものと考えられる。

出典:(平成28年4月28日)ガソリンの取引に関するフォローアップ調査について:公正取引委員会 報告書P37ー38

 

経産省GLの記載は、「ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」(以下「公取委GL」)をなぞったものとなっています。しかし、「優越的地位」は独占禁止法上禁止されている「優越的地位濫用」の一要件であるものの、それのみで法令上の意味を持つ訳ではないため、経済産業省ガイドラインの記載に独立して記載されることには違和感があります。

 

(2)優越的地位の濫用 

(問題となるおそれがある想定例)

系列SSに対して優越的な地位にある元売が卸売価格を一方的に決定するなどにより、正常な商慣習に照らして不当に、系列SSに不利益となるような取引の条件を設定することは独占禁止法上問題となる(優越的地位の濫用)。

経産省GLのP4)

 

系列特約店に対して優越的な地位(注2)にある元売が系列特約店に対する卸売価格を一方的に決定するなどにより,正常な商慣習に照らして不当に,系列特約店に不利益となるように取引の条件を設定すること(独占禁止法第2条第9項第5号) 

出典:ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について:公正取引委員会 第3

 

この経産省GLの記載は、問題となる「おそれ」ではなく、「問題となる」とあるため、表現が強いように感じられましたが、公取委の文章をほとんどそのまま使用しています。

 

(3)差別対価等

(イ)関係法令等に関する留意点

 有力な事業者が同一の商品について、取引価格やその他の取引条件等について、合理的な理由なく差別的な取扱いをし、差別を受ける相手方の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合には、独占禁止法上問題となる。

(問題となるおそれがある想定例)

 系列SSの仕切価格について、個別の値引き交渉により、特定の系列SSを競争上著しく有利又は不利にさせるなど、合理的な理由なく差別的な取扱いをし、一般SSの競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合には、独占禁止法上問題(差別対価等)となる。

 (経産省GLのP6)

 

有力な事業者が同一の商品について,取引価格やその他の取引条件等について,合理的な理由なく差別的な取扱いをし,差別を受ける相手方の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合にも,独占禁止法上問題となる。

出典:ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について:公正取引委員会 第2の1(2)

 

系列特約店の仕切価格について, 個別の値引き交渉により,特定の系列特約店を競争上著しく有利又は不利にさせるなど,合理的な理由なく差別的な取扱いをし,一般特約店の競争機能に直接かつ重大な 影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合には,独占禁止法上問題(差別対価等)となることに留意する必要がある。

 出典:(平成28年4月28日)ガソリンの取引に関するフォローアップ調査について:公正取引委員会 報告書P39ー40

 

こちらの経産省GLの記載も、公取委の文章をほとんどそのまま使用しています。

 

(4)その他(他の行政機関との関係)

経産省GLには独占禁止法以外に、景品表示法に関しても記載があります。

事業者の努力によって良質・廉価な商品・サービスを提供して顧客を獲得する競争は公正な競争環境の確保にとって不可欠であるが、独占禁止法上の不当廉売や不当景品類及び不当表示防止法上の有利誤認に該当する行為に対しては厳正な対処が行われるべきである。

経産省GLのP8)

 しかし、「経済産業省の対応」(経産省GLのP9)として、「経済産業省としては、(中略)公正取引委員会に対して、独占禁止法に違反する疑いのある事実に接した場合には、密接な情報提供を行うことにより、厳正な対処を求めていく」とはありますが、景品表示法違反の疑いのある行為について、消費者庁に対する対応は明記されていません。

 

 

(参考)

japancompetitionpolicy.hatenablog.com

 

 

 

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