競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

アマゾンのMFN条項に関する処理

アマゾンジャパン合同会社に対する独占禁止法違反被疑事件に対する公取委の処理として、自発的な措置を前提とした審査の終了が公表されました。

 

(平成29年6月1日)アマゾンジャパン合同会社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について:公正取引委員会

 

本件については、立入検査時に触れましたが、処理結果が興味深かったので、検討したいと思います。

japancompetitionpolicy.hatenablog.com

 

(1)形式

今回の事件処理は「アマゾンジャパン合同会社から,自発的な措置を速やかに講じるとの申出がなされ,その内容を検討したところ,上記の疑いを解消するものと認められたことから,本件審査を終了する」と記載されています。自発的な措置といった点や違反行為の有無を判断しなかった点からすると、確約手続*1に類似した処理と考えられます。

近年、違反行為が確認されなかった事例*2や違反行為は認められたものの措置の必要性が認められなかった事例*3はあったものの、違反行為の有無を明らかにしないまま、自発的な措置により違反行為の「疑い」を解消するとして、事件処理をした例は機械的な検索では確認できませんでした。

 

やや古い例では、「乗合バス事業者に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」(平成17年2月3日)*4において、「自主的に(中略)改善を図ったことから,審査を終了することとした。」とあります。これと本件の文言を比べてると、本件が確約を意識している様子がうかがえます。

 

(2)市場シェア

「我が国における主な電子商店街としては,Amazonマーケットプレイスのほか,楽天市場Yahoo!ショッピング等が存在する。」として、「電子商店街の市場」が記載されていますが、シェアに関する記載(定量的・定性的)がありません。

不公正な取引方法(競争減殺型)の排除措置命令では市場シェア関連の情報が基本的には記載されていることと比べると、異質に感じられます。

 

以下の情報はありましたが、「電子商店街」市場のシェア(インターネットでの直接販売を含まないシェア)は明らかではありません。

富士経済の調査によると「Amazon.co.jp」のほか、「楽天市場」(楽天)、「Yahoo!ショッピング」(ヤフー)など、国内の主要な五つの電子商店街の15年の流通金額は計3兆5700億円でネット通販市場の半数以上を占める。

https://mainichi.jp/articles/20170602/k00/00m/040/062000c

もちろん、電子商店街市場として競争への影響をとらえるべきなのか、直接販売等を含めて市場を観念すべきなのかは議論があろうかと思います。 

 

印象としては、アマゾンの電子商店街市場でのシェアがそれほど高くなかったため、敢えて記載をしなかった可能性が考えられます。

白石教授が競争への影響部分の記載にアマゾンといった固有名詞が言及されず、一般論となっていることを指摘しています。

 

 一般論となっている理由は、アマゾンのシェアが低く、アマゾンを主語にできなかったという可能性もあるかと思います。

 

(3)競争への影響

競争への影響としては、下記が記載されています。

電子商店街の運営事業者が出品者に価格等の同等性条件及び品揃えの同等性条件(別紙参照)を課す場合には,例えば次のような効果が生じることにより,競争に影響を与えることが懸念される。
 [1] 出品者による他の販売経路における商品の価格の引下げや品揃えの拡大を制限するなど,出品者の事業活動を制限する効果
 [2] 当該電子商店街による競争上の努力を要することなく,当該電子商店街に出品される商品の価格を最も安くし,品揃えを最も豊富にするなど,電子商店街の運営事業者間の競争を歪める効果
 [3] 電子商店街の運営事業者による出品者向け手数料の引下げが,出品者による商品の価格の引下げや品揃えの拡大につながらなくなるなど,電子商店街の運営事業者のイノベーション意欲や新規参入を阻害する効果

 

[3] については、一般的なMFN条項の競争制限効果と感じられます。

[2] については、[3]との違いが不明確であるほか、電子商店街の運営事業にとって低コストで、出品者の商品の価格低下・品揃えの拡大ができるのであれば、事業者の効率化に資する競争促進効果とも考えられ、「懸念」と言い切れないように思えます。

[1] については、出品者が「被害者」のようになり、一見、公正競争阻害性として、競争減殺ではなく、競争手段の不公正さを問題にしているようにも感じられました。*5また、MFN条項は出品者の価格引下げや品揃えの拡大を直接的に制限しているのではないため、[3]と同様に出品者の「意欲」に影響すると整理することや、更に踏み込んで出品者間で価格維持等の協調的行動を促しやすいことを認定すべきではなかったでしょうか。そこまでは認定できなかったということでしょうか。

 

 

(4)ITタスクフォース

公正取引委員会は,IT・デジタル関連分野における独占禁止法違反被疑行為に係る情報に接した場合には,「ITタスクフォース」において効率的に調査を行うこととしている。

とあるとおり、すでに「ITタスクフォース」が存在していた模様です。しかし、「ITタスクフォース」の設置自体の公表は確認できませんでした。ただし、平成13年には既に「IT・公益事業タスクフォース」が存在していたようです(現在の改廃は不明。)。*6

 

 

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