競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

介護に関する公取委報告書について(2)国会でのやり取り

混合介護について、国会でも取り上げられたようです。

保険制度の崩壊招く/倉林議員 「混合介護」撤回を/参院厚労委

 

公開された議事録が興味深いものであったので、紹介したいと思います。

参議院会議録情報 第192回国会 厚生労働委員会 第6号

 

平成二十八年十一月十七日(第192回国会 参議院 厚生労働委員会 第6号 )の倉林 明子参議院議員(共産)の質疑です。

倉林議員は看護師であったとのこと。

プロフィール | 倉林明子 日本共産党 参院議員・京都選挙区

 

(1)厚生労働省の受け止め方

厚生労働大臣からは、公取委の報告書に関して、「厚労省としては御意見をしっかりと受け止めて今後の対応を考えていきたいと思います。その際、私としては、利用者そしてその家族にとってプラスになるかどうかということをしっかりと見ていきたいというふうに思います。」との答弁がありました。

これは、現時点での具体的な意見を述べず、今後対応を検討することと、利用者・家族の観点という原則論を述べることにより、将来的な対応の自由度を確保したものと考えられます。

倉林明子(前略)

 混合介護の問題を今日質問させていただきたいと思いまして、資料を付けております。公正取引委員会が九月五日に、介護分野に関する調査報告書なるものを発表しております。資料一枚目、二枚目に付けております。これ、介護分野における諸問題への対応は喫緊の政策課題だということで、この分野で活発な競争促進をさせることで、介護サービスの、右の方に書いてあります、供給量を増加、介護サービスの質、利用者の利便性の向上、事業者の採算性の向上、介護労働者の何と賃金増と人手不足まで解消するというふうに効果、期待書いてあるわけですね。
 介護分野の規制を外して市場競争に委ねれば全て解決すると、こんな提案が出されたということに正直言って私あきれました。介護分野を所管する大臣として、私は、率直なこの提言に対する御感想をお聞かせいただきたい。
国務大臣塩崎恭久君) 本年九月に、公正取引委員会から介護分野に関する調査報告書が出されておりまして、その中で、いわゆる混合介護の弾力化について提言をされているものを今指しておられるんだろうというふうに思います。
(中略)報告書ではこの運用の見直しが提案をされておりますけれども、厚労省としては御意見をしっかりと受け止めて今後の対応を考えていきたいと思います。その際、私としては、利用者そしてその家族にとってプラスになるかどうかということをしっかりと見ていきたいというふうに思います。

 

(2) 公取委の提言の根拠

 公取委の政策提言の根拠は独占禁止法1条(目的)に基づく任務となるようです。任務ということは、具体的には27条を念頭に置いているものと考えられます。ただ、質問者は納得していない模様です。

独占禁止法

(目的)

第一条

 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

(任務、所轄)

第二十七条

 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第三項の規定に基づいて、第一条の目的を達成することを任務とする公正取引委員会を置く。

 

 

倉林明子君 (前略)本来、公正取引委員会たるものは、消費者利益のために不公正な競争、これを排除すべき役割があるんじゃないかと。権限を越えたような、介護、高齢者福祉のこれ政策に対する介入じゃないかと私は思うんですね。

 公正取引委員会にそこで確認したいと思います。
 一体この提言の法的根拠は何でしょうか、明確にお答えください。
○政府参考人(山田昭典君) お答えいたします。
 公正取引委員会は、独占禁止法第一条の公正かつ自由な競争を促進するなどの目的を達成することを任務としており、個々の独占禁止法違反行為に対して厳正に対処するとともに、公正かつ自由な競争が行われる環境を整備する観点から、これまでも様々な事業分野におきまして実態調査を行い、規制の在り方や取引慣行等について考え方を取りまとめてきたところでございます。
 今回の介護分野に関する報告書も、そのような観点から実態調査を行って取りまとめたものでございます。
倉林明子君 こういう政策介入みたいな法的根拠どこにあるのかと、今聞いていてもよく分からなかったですよね。ここにあるからこれをやったんだということの説明にはなっていなかったんじゃないかと思うんですよ。答弁は結構です。

 

参考 過去の混合介護に関する答弁

混合介護については、過去にどちらかといえば政府が前向きに捉える向きもありました。

衆 - 予算委員会 - 17号  平成27年03月13日

北川イッセイ君 成長戦略についての具体的な、できるだけそういう問題について話をしていきたいと、そういうように思います。
 成長戦略を挙げるときに必ず出てくるのが、介護、医療、環境産業ですね、こういうようなものに転換していってそれを伸ばしていくと、こういうことが必ず出てくるわけです。私もやはり将来可能性のある産業だなと、これを伸ばしていかないかぬということは同感であります。
(中略)
 先ほど、甘利大臣、本当に失礼しました、要らぬことを言いまして。具体的に、介護の産業に転換していくとか、そんなようなことで何かありましたら、ひとつ御披露いただけたらと思いますが。

国務大臣甘利明君) ほかに答弁する大臣が何か、厚労大臣が答弁されるのかと思いますけれども。
 例えば介護というのは、現状でいいますと混合介護なんですね。公的な保険がカバーするところと私企業が入れるところがあります。ここの分野でもいろんな提案がなされておりまして、公的制度で病院と介護の間にすき間があったりいたします。そこのところを民間のビジネスが入ってくる、あるいは民間の保険が入ってくる余地もあると。しかも、極めて低廉な保険料でできると。ビジネスクラス介護なんというちまたでは呼び名もありますけれども、そういうところも成長戦略の一つの箇所ではないかと思いますし、まさにマンパワー、このキャリアパスも含めて、しっかりとつくっていくということが検討課題として取り上げられるかと思っております。