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競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

デジタル関連分野への注力

前回のアマゾンジャパンに対する立入報道の関連です。

最恵国待遇条項 - 競争政策研究所

 

このようなデジタル関連分野への公取委による注力はどのように示されているでしょうか。主に法執行面から検討したいと思います。

 

まず、直近では「日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」(平成28年6月2日 閣議決定)において、下記の記載があります。

エ)公正かつ自由な競争を確保するための実態把握と厳正な法執行

・デジタル技術の進展、新たなビジネスモデルの登場など市場支配力も含めた産業構造が大きく変化する第4次産業革命が進展する中、デジタル市場における公正かつ自由な競争環境を確保し、イノベーションを促進する観点から、関係省庁が協力しつつ、同市場における取引実態を把握するための調査を行う。また、デジタル市場において市場支配力を有する事業者が公正かつ自由な競争をゆがめていないかを経済環境や市場の変化を踏まえて検証する等により、独占禁止法に違反する事実が認められた場合には、これに対して厳正・的確な法執行を行う。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/zentaihombun_160602.pdf

 このように、政府全体として、デジタル市場における積極的に措置を行うことが示されています。

このうち、「関係省庁が協力しつつ、同市場における取引実態を把握するための調査を行う。」という点については、経済産業省公正取引委員会による共同ヒアリング調査を意味するものと考えられます。

(平成28年2月10日)オンライン関連事業に関する共同ヒアリング調査について:公正取引委員会

 

この共同ヒアリングについては、興味深い記事もありました。

犬猿の仲といわれる経済産業省とも手を組んだ。昨年暮れに杉本委員長が経産省の菅原郁郎次官とひそかに接触。プラットフォーマーの実態を把握するため、共同調査を進めることで一致した。

標的はアップル 公取委・経産省が異例のタッグ :日本経済新聞

共同ヒアリングは、トップダウンで、かつ杉本公正取引委員会委員長からのイニシアティブで進められたことのようです。

 

次に、杉本委員長によるデジタル関連分野に関してのメッセージについて、杉本委員長就任後の講演等から検証します。

委員長講演等:公正取引委員会

 

平成25年3月の就任時から、平成26年の年頭所感までは、デジタル分野について、目立った言及はありません。

平成27年の年頭所感では デジタル分野について一定の言及があります。しかし、一般論であり、事件調査との関係では明示的には触れられていません。

2.競争環境の整備は,成長戦略でも今後成長が見込まれる分野とされている社会福祉,農業,医療,エネルギー,インフラ等の分野において特に重要な課題です。また,デジタルエコノミー,知的財産といった技術革新分野は,経済発展を牽引するイノベーションが見込まれる一方で,極めて早いスピードで市場環境が変化しており,競争政策においても,より複雑化する実態を見極め,競争環境を適切に整備していくことが求められるところです。

平成27年 年頭所感(平成27年1月) :公正取引委員会

 

しかし、平成28年の年頭所感では下記の記載があり、デジタル関連分野について、明確な問題意識を有し、積極的な調査・措置を行う意図を示しています。

現在の経済社会の動向に目を向けますと,グローバル化,デジタルエコノミーの進展,規制改革の進展に伴い,各国において新しいビジネスモデルが次々と創出され,経済取引も変化を遂げています。
 このような環境の下で,当面,競争政策上の課題は二つあると考えられます。(中略)また,二つ目の課題は,イノベーション推進のために競争政策をいかに運用していくかという点です。知的財産権と競争確保の関係は大きなポイントであり,このほか,情報通信技術やデジタル化の進展に伴うビジネスモデルの変化に対し,競争政策をどのように適用するかも重要な課題です。

(中略)

二つ目の課題については,(中略),強大な市場支配力を用いて新規参入を排除するなどにより,更なるイノベーションを阻害するような単独行為による反競争的行為についても,積極的かつ効果的に対処していきたいと考えております。

平成28年 年頭所感(平成28年1月):公正取引委員会

 

また、前述の日経新聞記事には平成27年にタスクフォースを設置したとの情報もあります。

公取委の杉本和行委員長もプラットフォーマー対策を「最優先事項」と語り、昨年から少数の職員を選抜してタスクフォースを設置。アップルやグーグルなど取引先企業に内偵調査を始めていた。

標的はアップル 公取委・経産省が異例のタッグ :日本経済新聞

 

このような情報を総合すると、デジタル市場に関して次のストーリーが考えられるかもしれません。杉本委員長は、平成27年から問題意識を明確化し、タスクフォースを設置したり、経済産業省との共同ヒアリングを計画・調整するなどして準備を行っていた。平成28年年頭には、デジタル市場に対する明確な方向性を示しつつ、2月に共同ヒアリングを開始し、8月にアマゾンジャパンに対する本格調査を実施するなど行動を活発化させた。

 

以上のように推測してみたものの、IT、知財、デジタルエコノミー関連分野を公取委が注視していくことは過去から示されていました。平成13年には既に「IT・公益事業タスクフォース」が存在していたようです(現在の改廃は不明。)。

 

公正取引委員会では,このような電気,ガス,電気通信事業分野における累次の 制度改正を踏まえ,これらの分野における公正かつ自由な競争の促進を図る観点か ら,平成13年4月に「IT・公益事業タスクフォース」を設置した。これにより, 違反行為に対する監視を強化し,既存事業者による新規事業者の参入阻害行為など の独占禁止法違反が認められた場合には厳正に対処することとしている。

出典:公益事業分野における相互参入について(平成17年2月 公正取引委員会事務総局) 太字は引用者による。

http://www.jftc.go.jp/dk/kiseikaikaku/kisei_kako.files/050218hontai.pdf

 

 

 

 

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