競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

JAおおいたに対する立入検査 など

JAおおいたに対する立入検査

大分県農業協同組合(JAおおいた)に対して、公正取引委員会が立入検査を実施したとの報道がなされました。概要については、次のようなものとされています。

JAおおいたは2008年、大分県北部の3市で生産される小ネギの銘柄を統一し「味一ねぎ」として商標登録しました。そして生産部会を設立し翌年2009年に集出荷施設を設置、皮むきや袋詰作業を一本化して全国に出荷しておりました。JAおおいたは組合員である生産者が農協を通さずに他業者に出荷した場合、味一ねぎの商標を使用させなかったり、集出荷施設の利用を拒否することによって生産したネギの全量をJAおおいたに出荷するよう強制していた疑いがもたれております。強制をうけていた生産者の通報を受け公取委は先月27日、JAおおいたに立入検査を実施しておりました。

出典: JAに公取委が立入検査、事業者団体規制について | 企業法務ナビ

 

このような行為に対しては、

JAおおいたのこのような措置は8条5号や一般指定5項に該当する可能性が高いと言えるでしょう。
出典: JAに公取委が立入検査、事業者団体規制について | 企業法務ナビ

といった、独占禁止法違反の可能性が高いとの評価もあります。

 

競争に悪影響を与える可能性を指摘するにとどまる評価もあります。

仮に、報道されているような、JAを通じた出荷をせずに、他の販売先に出荷したことを理由に、ブランド名や集荷設備の使用で差別的な取扱いをしているとすると、それによって競争に悪影響が生じることもあります

出典: JAが全量出荷強制、従わない農家にブランド使わせず…独禁法でどんな問題になる? - 弁護士ドットコム

  

農業に関しては、「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成19年4月18日 公正取引委員会。以下「指針」と言います。)が存在します。*1

しかし、報道の行為について、同指針で明示的に記載があるものではなりません。

手がかりは次の2点と考えられます。
(1)商標や共同施設の利用拒否
(2)ブランド

 

(1)商標や共同施設の利用拒否

指針では、以下の記載があります(太字は引用者によるもの。)。

(2) 共同利用施設の利用に当たって販売事業の利用を強制する行為
 共同利用施設の利用を制限又は禁止されると,組合員が農業活動を行う上で重大な支障が生じることについては,前記1(2)のとおりである。
 このため,単位農協が組合員に対して,共同利用施設を組合員が利用する際に,自己の販売事業の利用を強制する等何らかの方法により,販売事業の利用を事実上余儀なくさせる場合には,組合員の自由かつ自主的な事業活動が阻害されるとともに,競争事業者が組合員と取引をする機会が減少することとなる。例えば,以下のような行為は,不公正な取引方法に該当し違法となるおそれがある(注8)(一般指定第10項(抱き合わせ販売等),第11項(排他条件付取引)又は第12項(拘束条件付取引))。
(注8)前記1(2)の(注5)と同じ。
[1] 単位農協が組合員に対して,組合員が共同利用施設を利用する際に,販売事業の利用を条件とする行為
(具体的事例)
ア 単位農協が自ら事業主体として行っているビニールハウスのリース事業について,組合員がリース事業を利用するに当たっては,農産物を単位農協へ出荷することを義務付けること
イ 単位農協が組合員に対して,単位農協を通じて米を出荷しない場合には育苗センター,ライスセンター及びカントリーエレベーターの3施設の利用を断ることがある旨を各施設の利用案内文書に記載して,組合員に対して周知することにより,当該組合員に単位農協を通じて米を出荷させること

まず、共同施設の利用は組合員の事業上重要であることが述べられております。その共同施設の利用の条件として、農協の販売事業の利用を強制させることは、組合員の自由かつ自主的な事業活動の阻害と,競争事業者の組合員と取引をする機会の減少の二つの側面から問題となり得ることが示されています。

ブランドについては明示されていませんが、共同施設の利用と同様に重要な要素であれば、上記の指針の論理は同じではないかと考えられます(後記のブランドの留意点を除く。)。

また、競争に関する影響(いわゆる弊害要件)としては、組合員の自由な事業活動の阻害の程度、競争事業者に与える影響という面から検討されるのではないかと考えられます。

 

(2)ブランド 

指針では、ブランドに関して次の記載があります。

(4) 販売事業の利用に当たって購買事業の利用を強制する行為

(中略)

(注7)一般的に,農畜産物の品質を揃え,ブランド農畜産物として出荷するために,品質の均一化等に関し合理的な理由が認められる必要最小限の範囲内で,単位農協の農畜産物の生産方法を統一すること(使用する農薬や肥料その他の生産資材を同じ品質・規格とすること等)は,それ自体は独占禁止法上問題となるものではない。

また、ブランドについては、「「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」(原案)に寄せられた主な意見の概要及びそれらに対する考え方 」で次の考え方が示されています(「注8」とありますが、質問と文脈から考えると現指針の「注7」を指すものと考えられます。)。

なお,具体的な行為が(注8)に当たるかどうかについては,当該ブランド農畜産物の品質・規格の内容や程度,生産方法の統一の必要性等を勘案 して,個々のケースに応じて,市場の競争に与える影響から判断されます。

http://www.jftc.go.jp/dk/noukyou/noukyou.files/noukyoupc.pdf

 このように、ブランドの維持のためには、「合理的な理由が認められる必要最小限の範囲内」で、一定の拘束行為が独占禁止法上問題とならないことが明記されています。

前記(1)の検討によって仮に商標や共同施設の利用拒否が競争上問題があるとされた場合、ブランドの維持のための正当化事由に類似する観点から検討されるのではないかと考えられます。

 しかし、ブランドに関する行為について、合理的な理由を正当化事由としてではなく、「市場の競争に与える影響」から判断するのは、記載からはどのような論理であるか明らかではないように感じられます。



(参考1)立入検査に対する当事者の反応

大分県農業協同組合からは以下のプレスリリースが公表されています。

 

公正取引委員会の立ち入り検査について

 拝 啓
 秋冷の候、組合員・利用者の皆さま方におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。平素より、JA事業につきましては格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。 
 さて、マスコミ報道もされましたとおり、当組合におきましては10月27日、28日の両日、公正取引委員会の立ち入り検査を受けました。組合員・利用者の皆さまには、大変ご心配をお掛けしております。 
 内容につきましては、調査の段階であり、結果が出た段階で、改めて報告をさせていただきます。

出所:公正取引委員会の立ち入り検査について | JAおおいた

 

公取委の調査に対して協力する旨が記載されてあるプレスリリースを目にします*2

が、今回はそのような記載はありません。

 

(参考2)

本件とはあまり関係ないのですが、自民党農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム(PT)の小泉進次郎委員長が下記の発言をしたとされています。

「協同組合は、株式会社にはできない共同購入ができる。その強みを最大限発揮する組織とはどういうあり方なのか。僕は今、その言葉(株式会社化)を使っていない」

www.sankei.com


 協同組合は共同購入ができて、株式会社では共同購入ができないとの意図と考えられます。

しかし、以下の相談事例もあるとおり、共同購入の内容によっては、少なくとも独占禁止法上は実施できる場合もあります。

競争関係にあるメーカーが合理化を推進するために,共同で資材及び部品の購入を行うことは,独占禁止法上問題ないと回答した事例。

http://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/kyodokoi/kyodo3.html

 

自動車部品メーカーが,共同出資会社を通じて原材料の共同購入を行うことは,独占禁止法上問題ないと回答した事例

http://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/h16/h14_15nendomokuji/h14_15nendo07.html

 

農協については、近日中に別途検討をする可能性があります。

 

 

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