長崎県での金融庁説明会
実施から1ヶ月以上経過してしまいましたが、金融庁が2017年3月8日に長崎県での説明会を開催したとされています。公式の記録は確認できていませんが、一定の記事が存在します。
(1)開催目的
説明会の開催目的は、
- 「市場が寡占化して貸出金利が高止まりする」といった地元の不安を解消
に加えて、
- ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の統合実現に向けた“援護射撃”
- 統合効果が乏しい地銀再編に警鐘を鳴らす金融庁の意図
が推測されています(上記「きんざい」記事より)。
(2)金融庁による経営統合推進
上記2記事によると、
- 金融庁が地銀の経営統合を積極的に推進しているという見方
- ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の経営統合を金融庁が強く働きかけたとの見方
については誤解と述べられたようです。
この「誤解」に関して下記の論文を連想しました。
同論文では、ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の経営統合について、銀行の費用削減、貸出金利の低下などの「事実が検証されるなか、十八銀行と親和銀行の合併を促さない事由は何であろうか。」 と結論として述べています。
公取委が経営統合を「認めない事由」でなく、「促さない事由」となっており、経営統合を促すような積極的な関与を暗に提言しています。
この「促す」主体は明示されていませんが、公取委が促すことは無いと考えられ、金融庁又は政府全体と考えられます。
このような論文からも、金融庁が長崎県の地銀の経営統合を積極的に推進しているとの見方は整合的に感じられます。
(3)金利に対する金融庁の関与
金融庁は
- 寡占化による貸出金利の上昇シナリオは、「検査・監督を通じたモニタリングによって解消可能」(幹部)という考え方
を有しているとのことです(上記「きんざい」記事より)。
具体的に想定される手段、その手段の効果は定かではなく、貸出金利上昇を「解消」できるのかも不明です。しかし、競争政策の観点からは、価格に対する行政機関の関与は原則として、否定的に解されています。*1
以下の記事もご覧ください。
japancompetitionpolicy.hatenablog.com
japancompetitionpolicy.hatenablog.com
*1:例えば、
公正かつ自由な競争を維持・促進するためには、商品又は役務の価格設定が事業者の自主的な判断に委ねられる必要があり、行政機関は、法令に具体的な規定がない価格に関する行政指導により公正かつ自由な競争が制限され、又は阻害されることのないよう十分留意する必要がある。