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競争政策研究所

将来の研究所を目指して、独禁法、競争法、競争政策関連の考察をしています。

キリン/アサヒ社長対談と独禁法(4)コンプラ体制

キリン/アサヒ社長対談と独禁法

(1)記事の概要

(2)シェア配分カルテルや価格カルテル

(3)黙示による意思の連絡

の続きです。

 

 

これまで対談のカルテル該当性について考察してきました。

今回は2社のコンプライアンス体制について、調べてみたいと思います。

 

公正取引委員会が「企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について」報告書を公表しています。*1

同報告書によると、東証一部上場企業1,681社にアンケートをした結果、同業他社との会合等に関するルールを定めていない企業は46.4%とのことです。

一定数の上場企業は同業他社との接触について何らかのルールを設けているようです。具体的には下記のルールのようです。

f:id:japancompetitionpolicy:20160430221559p:plain

2社がどのようなルールを定めていたのか(定めていなかったのか)はわかりません。しかし、今回の対談は、社長の出席であるため、事前届出、事前の許可、事後の内容報告は意味をなさないかもしれません。

 

また、「⑤会合等の場における一定のルールを定めている。」と回答した企業における具体例も掲載されています。

・ 会合参加を原則禁止とする例
・ 会議冒頭にコンプライアンスの遵守を宣言することとしているとする例
・ 価格,数量等の話題が出たら不参加の表明を行い,直ちに退場することとしているとする例
・ 同業者同士の会合には,必ず第三者も同席させるとする例
複数の同業者が一堂に会する会議に参加する場合は,議事録を作成し,価格の取決めの際には退出することを義務化しているとする例
・ 社外の会合等は前もって広報部に届出をさせて,その目的や性質等を確認しているとする例
・ 会合出席の届出とコンプライアンスオフィサーの承認を必要としているとする例
・ 会合で違反行為があった場合は,問題点を指摘し,議事録に残すことを要求し,帰社後に報告することとしているとする例

弁護士による著作や講演でも、「価格に関する話になった場合はすぐに席を立つ」とのアドバイスが一般的だと思います。2社においては、そのような取決めが無かったのか、社長にまで浸透していなかったのか、特別の事情があったのか分かりません。

具体的な数字を示しての対談では無かったため、継続の判断だった可能性もあります。しかし、カルテルや談合は、最初から単刀直入に合意をするのではなく、各社の苦境について発言しあったり、お互いの腹を探るところから始まることも多いと考えられます。また、具体的な数字を用いてないにせよ、対談におけるシェア競争の停止の発言は相当踏み込んでいるように思われます。

 

報告書では、独占禁止法コンプライアンスの実効性を確保するために有効であると考えられる方策や工夫・留意点として次のように記されています。

オ 同業他社との接触ルールの策定
 同業他社との接触や業界団体の会合等への出席は,カルテルや入札談合といった独占禁止法違反行為につながるリスクを伴うものである。特に,営業担当者による同業他社との接触はそのリスクが高いことから,具体的な留意事項等を定め,周知することが必要である。
 アンケート調査によれば,過半の企業が同業他社との接触ルールを設けているところ,同業他社との接触ルールを的確に統一的に運用するためには,所属部署の上司だけでなく,法務・コンプライアンス担当部署も関与することが必要である。

各社あるいは公正取引委員会は、営業担当者のみならず経営幹部の接触のリスクについても言及した方が良いかもしれません。

 

ちなみに、アサヒビールについては、「アサヒグループ企業倫理ガイドライン」で次のとおり定めています。*2

(1)不公平な取引、不正な取引の禁止

私たちは、各国・地域の独占禁止法その他の関連する法令及び規範を遵守し、お得意先、競合他社又は消費者に対する不公正な取引及びカルテル行為は行いません。また、万が一競合他社によるそのような行為があれば、毅然とした対応をとります。

 

キリングループのコンプライアンスガイドラインにも次のとおり定めています*3

独占禁止法の遵守

いかなる状況であっても、不正な手段をもって、カルテルや再販売価格の維持・取り決め等独占禁止法違反となるような行為は行わず、公正で自由な競争を行います。

ちなみに、アサヒビールは2004年のアサヒビールグループ企業倫理規程では次のとおり定めていたようです。*4

第2章 お得意先・業界との関係

私たちは、お得意先・業界、また競合他社に対しても、独占禁止法不正競争防止法・知的財産関連法規等を遵守し、公正な取引・フェアな競争による業界の発展に尽くします。

1)お得意先との関係

独占禁止法国税庁通達、業界自主基準その他関連する法規・規範を 遵守し、不公正な取引は行いません。

2)業界・競合他社との関係 

1.カルテル行為・談合、またその疑いを持たれるような行為は行いません

(太字は引用者)

「疑いをもたれるような行為」が削除されたため、ある程度踏み込んだ行動に出られたのかもしれません。 

 

次回は最後(予定)に独禁法とマスコミの関係についてです。

 (続く)

 

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